(2021年4月22日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)
「経済安保」という言葉が真に意味するものは、エネルギーではなく「食料」だと考えています。
わが国の食料自給率は37%(令和2年度)、これは過去最低水準であります。
カナダ266%、オーストラリア200%、アメリカ132%、フランス125%、スペイン100%という数値と比べると、極端に日本の食料自給率が低いことがわかります。
消費者物価指数は今月、昨年同月を0.8%上回り、7か月連続で上昇しています。
その背景には、エネルギー以上に食料に対する不安要因があります。
その意味においても今、農業、水産業、畜産業、そしてそれに伴う加工業等の構造を見直すべき時だと思います。
沖縄県の食料自給率も34%(令和元年度)と低い状況にあることを考えると、自分たちの県、国で、食料自給率を上げるための施策をつくり、実行していかなければなりません。
私は今日、沖縄県うるま市で高級魚「琉球スギ」「ミーバイ」の養殖、そして「モズク」の養殖・加工場の視察をしてまいりました。
琉球スギとミーバイの養殖場においては、軽石被害で甚大な被害を受けながら、そしていまだ軽石問題が解決されないまま、一生懸命に養殖に取り組んでおられました。
私が養殖場を見ながら思ったことは、行政がこの養殖による漁獲高を現在の10倍にまで引き上げようという熱い思いが見えないということであります。
沖縄県は、この高級魚の養殖を沖縄の水産業の振興に位置づけ、もっと手厚い策を講じるべきだと思います。
海面養殖全国1位の愛媛県にあるような、台風にも強い養殖施設を整備し、高度な冷凍・冷蔵施設を備えた加工施設も併設する中で、長期的に食料備蓄ができるようになります。
そのことは、沖縄の養殖のシェアを増やすことになり、食料自給率を上げることにもなります。
また、モズク養殖・加工施設においては、生モズクだけではなく、幅広い商品開発を行うことがモズクの消費拡大につながるという提案をしてきました。
モズクには、がんに対して有効に作用すると言われている成分「フコイダン」が多く含まれています。
そのフコイダンを、塩せんべいや餅、ちんすこうに採り入れたり、健康というキーワードの下に商品を開発したりすると面白いのではないでしょうか。
私が昔から提案しているのが、モズクを板海苔風に加工した「モズク海苔」です。
モズク海苔は、全国の海苔や韓国海苔に匹敵するか、それを超えるものになることは間違いないと思います。
そうすれば、モズクの消費量は格段に増えることになるのです。
私たちにいま必要なことは、「食料安保」という視点に立ち、素晴らしい素材の魅力を引っ張り出す政治の仕組みをつくるということです。
山中貞則先生は、私にこう言っていました。「ミキオ、日本には世界中からたくさん安い食料が入ってくるよ。
しかし、その世界の安い食料価格に、わが国の野菜農家や畜産農家が苦しみながら農業を放棄し、水産業者が水産業を放棄すれば、世界はこの時とばかりに価格を吊り上げてくる。
今は安いけれど、最終的には高値になる。だから、わが国の農水産業政策は、金に糸目をつけずにやらなければならないんだ」山中先生の予言通り、世界の安全保障の不安要因は、食糧安保をも脅かします。
それに備えるためにも、沖縄県が独自に農業政策や食料政策を立案・実行し、県民の生命と生活を守るという姿勢を示すことが大事なのです。