(2021年2月25日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)
2022年2月24日、ウクライナで戦争が始まったという悲しいニュースが飛び込んできました。
現代の世界の中において、大変衝撃的で、残念なことです。
ウクライナは、ロシアとNATO加盟国との間に位置し、ロシアにとって緩衝地帯として重要な国です。
ロシアからすると、対抗勢力であるNATOにウクライナが加盟することは、ウクライナにNATO軍やアメリカ軍が配備される可能性が高く、ウクライナにミサイル基地が整備されれば、ロシアの国土の広範囲が射程となり、安全保障上の脅威となります。
ウクライナのNATO加盟の動きが加速する中、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派の支配地域の独立を承認するという行動にでたことで、それを認めるはずがないウクライナ政府が反発し、ロシアは「ウクライナが軍事的な挑発を行っている」として軍事侵攻を始めたのです。
この危機を打開するには、ロシアとの長い国境をもつフィンランドのように、「NATOに加盟せず、ロシアの軍事的影響下にも入らず、経済圏は欧州」という方法がよかったと考えています。
欧米諸国もウクライナの実情を踏まえ、NATOへの加盟のあり方を、現実的に考えていくべきでした。
このウクライナでの戦争は決して対岸の火事ではなく、私たち日本にも大きな影響があります。
一つ目は、燃料価格がこれまで以上に急速に高騰することです。
現在、与那国町でのガソリン価格は1リットル税込220円という話も聞きました。
私たちの生活は更に厳しい環境になるでしょう。
しかし、戦争になれば燃料価格が高騰するということがわかりながら、日本政府は米国などからの要請で日本が輸入している液化天然ガスを欧州に融通することを決めました。
これは資源のない日本がやるべきことなのか、私には理解できません。
二つ目は、北方領土問題。
わが国の北方四島は、日本の領土であるにもかかわらず、ロシアに不法占拠されています。
ウクライナ問題を見ていると、ロシアが北方四島を日本の領土だと認めた途端、沖縄に米軍基地があるように、日米安保を根拠にしてアメリカ軍が北方四島に基地を建設するのではないかという懸念をもっていることは間違いなく、そのことを解決しなければ、この問題は前に進みません。
ただし、今回ウクライナに侵攻したロシアとの間で平和条約交渉ができるかというと、そう簡単なことではありません。
ここはやはり、ロシアと真剣に話をしなければなりません。
三つ目に、中国による台湾への侵攻。
中国は、ロシアがウクライナに侵攻したのを見て、「ロシアもやってるんだから、俺たちもいいんじゃないか」という論理を持つかもしれません。
ロシアのウクライナ侵攻は、中国にこのような口実を与えてしまうこととなり、台湾に中国が侵攻したら、沖縄は大変なことになります。
今回のロシアによる軍事侵攻を中国がどのように評価し、どう捉えているのかについて、今後、中国の対応をしっかり注視していく必要があります。
プーチン大統領と27回もの会談を重ね、お互いを、「ウラジーミル」「シンゾー」と呼び合う仲の安倍晋三前総理には、今こそ外交的な役割を担っていただくことが大事です。
このような時に、プーチン大統領に言うべきことを直接言ってこそ、安倍前総理の真価が発揮されるのではないでしょうか。
また安倍前総理には、バイデン大統領を説得する力もあることから、どのタイミングで、誰を使い、どのように世界の外交をリードするのか、というシナリオが今回の日本外交には見えないことが問題です。
ロシアに侵攻されたウクライナに対し、欧米諸国が自分たちの軍隊を送り、血を流してまで守ろうという姿勢は、残念ながら見えてきません。
それは、クウェートに侵攻したイラクに対して多国籍軍が組織された時とは大きく異なります。
経済制裁によって効果が出るかどうかわかりませんが、まずはウクライナがNATOに加盟しなくても、国の安全保障を維持できる仕組みを実現しなければなりません。
そのための対話の場を設けるために、日本は全力で外交に取り組まなければならないのです。