(2021年9月3日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)
9月3日午前、「菅総理が自民党総裁選挙出馬せず」というニュース速報が流れ、私も本当にびっくり致しましたが、私と同じように、多くの国民も驚いたと思います。
一国の総理大臣が自らの進退を決めた経緯について、そう簡単に計り知ることはできませんが「総理大臣として、コロナ対策を最後まで全うしたい」という思いと、「自らの内閣支持率の厳しい環境」の2つの要因があったのではないかと思います。
衆議院・参議院議員選挙においては、時の総理大臣の内閣支持率が与党の議席数に大きな影響を及ぼすことになるだけに、内閣支持率が30%を切ると必ず、党内の若手議員のなかから「政権の顔を替えて選挙をすべきだ」という突き上げが強まります。
このようなことは、これまでの自民党の長い歴史の中で幾度となく繰り返されてきました。
自民党総裁・内閣総理大臣が自ら決断し、辞任を表明するということは、「自民党を守る」という強い思いがなければできるものではありません。
自らの何十年というキャリアの下に勝ち取った日本の政治のトップの役割ですから、それに自ら終止符を打つという決断は、そう簡単なことではないのです。
そこには「自民党を守る」という大義しかなく、それができる人しか、自民党総裁・内閣総理大臣に就く資格を持つことはできないのです。
自民党が長期政権を維持し続けている最大の要因は、「最後は自民党を守る」という一点のみの共通認識が、誰が政権を取っても“ある”ということを示しているのではないのでしょうか。
今回、菅総理自らが辞任を決断したことによって、次期衆議院選挙の空気が一変することになりました。
なぜかといえば、「菅総理が総裁選挙に出馬し、新人候補と壮絶な戦いを繰り広げ、新しい総理総裁が誕生する」というケースと、「菅総理は総裁選挙に出馬せず新人同士で争い、新しい総裁総理が誕生する」というケースでは、国民に全く違う化学反応が起こるからであります。
1ヵ月後に迫った衆議院選挙を考えると、「長期政権で輝かしい実績を積み上げた安倍政権」とは真逆の、「新しい政治が到来した」というイメージを国民が抱くことが、重要だからであります。
菅総理が総裁選不出馬を決断したことが、次期衆議院選挙にいかに大きな意味を持つことになるか、それはある意味、窮地に追い込まれていた自民党を救うことになったということを、私は感じています。
平成8年の衆院選当選同期であり、菅総理の人間性や、政治家としてのずば抜けた資質を、間近で見てまいりました。
平成10年の自民党総裁選挙において、小渕・梶山・小泉の3候補が立候補し、同じ田中派であった小渕氏・梶山氏の両者が壮絶に戦い合うなかで、派閥の同期でただ一人だけ派閥を抜け、梶山支持へ回った菅義偉という一政治家の決断を、今日改めて思い起こしました。
菅義偉は、政治的に自らに厳しい決断ができる政治家であります。
それだけに、内閣総理大臣として最後までコロナ対策の陣頭指揮を執り、その総理としての役割を終わりたいという決断に至った政治姿勢は、政治家として見習うべきものであると思います。
一年間にわたり、内閣総理大臣としてこれまで誰も経験したことのない「コロナ」との戦いに全身全霊を傾けて頑張られたことに、心より敬意を表するものであります。
政治は「決断力」と言われますが、まさにその姿を今日私は、見させていただいきました。