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「追随型外交からの脱却」

(2021年4月23日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)

先週は、日米安保の真の姿について書きましたが、今日は、4月16日の日米首脳会談について、下地幹郎の思うところを綴っていきます。

日米首脳会談を受けた共同声明で台湾問題に言及したことに驚いたのは、私だけではないと思います。

冷戦期の1969年、佐藤栄作首相とニクソン大統領の会談以来、52年ぶりのことだからです。

この日米共同声明が、中国に対する強力なメッセージになったことは間違いありません。

しかし、外交においてどれほどの化学反応を起こせるのか、簡単に予想することは出来ないと思います。

ジョン・ケリー米大統領特使は4月14日、中国を訪問し、環境問題について協議を行いました。

日米首脳会談は当初、4月9日に予定されていましたが、ホワイトハウスは意図的に日程を1週間延期し、4月16日となったのです。

万が一、ケリー特使の訪中前に日米首脳会談が行われ、「台湾海峡の平和と安定」を盛り込んだ共同声明を日米が発表したとしたら、ケリー特使の訪中は実現せず、バイデン大統領が主催し、世界首脳40名が参加して昨日から始まった気候変動サミットに対しても、中国は不参加を表明したかもしれません。

ケリー特使の訪中が日米首脳会談前に行われたことは、ホワイトハウスが練った戦略なのです。

「台湾海峡有事」「尖閣有事」これらが米国のなかでリアルな姿として立ち上がるようになったのは、香港の人権問題に対する中国の強硬姿勢を見てからであります。

私はいま、「中国の」と書きましたが、実際は「習近平主席の」と書くほうが正しいかもしれません。

米国は、習近平主席が台湾に対しても香港と同様の強硬姿勢をとることを強く懸念しており、急速に台湾とのアクセスを始めています。

一方、「アメリカは『台湾海峡有事』『尖閣有事』において、『これはわが国の存立危機事態の要件にあたる』と、日本に言わせたいのではないか」との声も聞こえ始めてきました。

存立危機事態とは、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」のことでありますが、これを日米間に適用すると、「米国が日本の友好国に対して行う戦闘行為について、日本は支援を行うことができる」ということになります。

52年ぶりに日米両首脳が共同声明で「台湾海峡の平和と安定」について言及したのは、決してその場の思いつきなどではありません。

「過去30年間で44倍にも膨れ上がった中国の防衛費」「ウイグル・香港における人権問題」「尖閣問題」「サプライチェーンに及ぼす中国の強い影響力」これらの一つ一つが積み上げられた結果が、「台湾海峡の平和と安定」という共同声明に結実したのです。

これによって、日本は、南西諸島の防衛網の強化を図り、有事の際には「存立危機事態にあたる」との態度を明確に示すことで、結果として、自ら衝突が起こる可能性を高めてしまっているのです。

私は、この安全保障環境における危険な積み上げを制御できるのは、外交の冷静な対応しかないと思います。

その意味において、アメリカ追随ではなく、世界から認められる強い平和外交、言い換えれば、「目には目を、歯には歯を」とは全く違う外交を担う役割が、今の日本に求められているのです。

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