(2021年3月5日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)
先月から、月初めのメルマガで、下地幹郎が前月読んだ本についての感想等を書かせていただいております。
今回は2月に読んだ本の中から選んで紹介します。
1冊目は、岡田充著「米中新冷戦の落とし穴~抜け出せない思考トリック~」。
「親中国的」な視点から、中国との関係をどうするかについて書かれております。
米中関係の一番の落とし穴は「二者選択の罠」、つまり「中国を選ぶか、米国を選ぶか」という選択肢を求めることにあると書かれております。
中国が“チャイナ・スタンダード”を世界に強要することについて、「中国は、社会主義強国を実現するために、資本主義世界での発展を続けるパラドックス(逆説)のなかで生きている」という説明をしながら、中国とどのように付き合うべきかを問いかける内容でありました。
2冊目は、ジョン・ボルトン著「ジョン・ボルトン回顧録~トランプ大統領との453日~」。
非常に興味深く、「トランプ政権が行った一つひとつの決断は、このような考え方に基づいたものだったのだな」ということが分かる“暴露本”的な内容であります。
「トランプ大統領が、どのような情報から、どのような戦略をもって、政治決断をするのか」について書かれた部分には、本当に引き込まれました。
例を挙げると、安倍総理がトランプ大統領の要請でイランを訪問し、最高指導者ハメネイ師と会談したときの、その結果についてのトランプ大統領のコメントです。
「安倍総理のイランに対する姿勢と、北朝鮮に対する姿勢が全く異なることが問題であった」「しかし、その結果については気を病むものではない」「日本にお願いしておいて、そんなことを言うのか」と呆気にとられました。
また、ウクライナ問題においては「ウクライナ支援と、バイデン大統領の息子のウクライナ疑惑情報とを駆け引きした」ことなども、あからさまに書かれておりました。
一つだけ残念だったことは、この回顧録において「沖縄の米軍基地問題について、深い論議が行われた」という記述がないことです。
沖縄の米軍基地問題に対するワシントンの意識が、決して高いものではないということを知る事ができました。
このようなアメリカ大統領の「決断」の背景ですが、トランプ大統領だけが特殊なのか、歴代の大統領もそうであったのか、興味を持つところです。
いま、オバマ大統領の書いた「大統領回顧録」がベストセラーになっておりますが、面白さにおいては「ジョン・ボルトン回顧録」のほうが上を行っていると断言できます。
3冊目は、別冊宝島編集部編「田中角栄100の言葉~日本人に贈る人生と仕事の心得」。
「仕事をするということは、文句を言われるということだ。褒められるために一番良いのは仕事をしないこと。しかしそれでは政治家はつとまらない。批判を恐れずやれ」「必ず返事は出せ。たとえ結果が相手の思い通りでなかったとしても、『聞いてくれたんだ』となる。これは大切なことなんだ」「方針を示すのが政治家の仕事だ。役人は生きたコンピューターだ。方針を示せない政治家は役人以下だ」非常に勉強になりました。
年に一冊、田中角栄先生の本を読むと、自分の政治に対する考え方が一段と深いものになります。