(2021年1月29日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)
1月28日午前0時45分から約30分間、菅総理とバイデン大統領の就任後初となる電話会談が行われました。
関係者の話によると、日本時間の0時45分ということもあり、バイデン大統領が「I’m sorry, I’m sorry」と何度も恐縮しながら会談が始まったということでありました。
また冒頭で、菅総理がバイデン大統領の政策の中心である「地球温暖化問題」に対する考え方を述べると、バイデン大統領は「それよりも中国の話をしよう」と発言し、「日米安全保障条約第5条を尖閣諸島へ適用すること」「自由で開かれたインド太平洋の実現にむけて緊密に連携すること」について合意したとのことです。
今回の日米首脳電話会談は、非常に友好的な雰囲気のなか、多くの結論が導き出され、外務省の根回しが成功したように思われます。
また、この電話会談に先立って行われた茂木外務大臣とブリンケン国務長官との電話会談においても同じような内容が合意されているほか、「拉致問題の早期解決」「北朝鮮非核化」についても確認されたと言われております。
私はこれらを否定するものではありませんが、合意すべき重要課題が二つ、抜けていたのではないかと思います。
一つは「コロナウイルスのワクチンについて、GDP第1位のアメリカと3位の日本が率先して後発開発途上国からの接種を進めるべきで、先進国だけを優先させてはいけないということ」、二つ目には「東京五輪開催に向けて、日米が緊密に協力していくこと」であります。
この二つがなぜ抜けていたのか、私は疑問でなりません。
日米の電話会談は、世界中の国々が注目しています。それだけに、両国家間だけの問題を話し合うのではなく、世界に及ぼす影響をしっかりと念頭においたものにすべきだと思います。
「ワクチン接種は公明正大を心がけ、先進国だけに偏らないようにする」との合意がなされれば、「日米は間違いなく世界のリーダーだ」という評価を得られたのではないかと思います。
また東京五輪については、無観客開催であれ何であれ日米が開催に合意することこそが、アスリート達のみならず、コロナで苦しみ闘う多くの人々に「今この時を乗り切って頑張ろう」という勇気を与えることになり、世界の人々の前向きな気持ちを引き出すと同時に、「アメリカは“アメリカ・ファースト”から、世界の問題に正面から向き合う国家へと戻ってきた。それは、日本の菅総理がそのように導いたからだ」という評価につながったのではないかと思います。
この二つの重要項目が合意されていないことは、日米両国間の事務方の根回しにぬかりがあったと見て取れます。
「尖閣諸島に日米安全保障条約第5条を適用することを確認できれば良い」だけではなく、「グローバルな視野をもった合意内容をもっと盛り込むべきだった」と考えるのは、私だけではないと思います。
2国間外交だけを話し合う“日本”と“アメリカ”ではなく、世界が尊敬の眼差しを向けるような合意を会談のなかに散りばめる。
そうすることで、日本の国力の大きさを外交の面から世界に理解してもらえたのではないでしょうか。