(2020年11月13日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)
菅総理大臣は12日、米大統領選で当選確実となった民主党のバイデン前副大統領と電話会談を行いました。
この電話会談で注目されたのが、バイデン氏が「尖閣諸島は米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用範囲である」との見解を示したと発表されたことであります。
初めての電話会談において、これほどまでに深堀りした内容の会談をすることは一般的に考えられないだけに、驚いたのは私だけではないと思います。
「自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、日米が共に連携をしていこう」という程度であるにも関わらず、これほど踏み込んだ発言をした背景は3つあると思います。
一点目に、大統領選で「民主党政権とバイデン候補は中国に弱腰になるだろう。
そして、アメリカの製造業は、また中国に乗っ取られてしまう」とトランプ大統領から激しく攻撃されたことへの反動です。
世界中が注目する菅総理との初の電話会談で、意図的に尖閣諸島についての発言を行ったのではないか。
つまり、尖閣への言及はアメリカ側からの要請で行われたとみるべきだという見解であります。
そのことについて、中国外交部報道官がすぐに反応を示していることからすると、シナリオ通りと言えるのではないでしょうか。
二点目には、中国公船が盛んに尖閣諸島への領海侵犯を行っていることの大きな原因は、トランプ政権が中国に対して「経済面を中心に規制の強化を行う」という敵対行動をとっていることへの対抗措置だと言われています。
つまり、アメリカの同盟国である日本に対して、尖閣諸島への領海侵犯という行動を重ねることで、中国は米国に対して対抗姿勢を示しているというのです。
この状況を解決するために、日米安全保障条約第5条の適用について言及し、「中国が米国との正常化を図りたいならば、尖閣諸島への領海侵犯をやめるべきだ」というサインを送ったという見解であります。
三点目には、バイデン氏の「親中イメージ」を払拭する狙いとも言われております。
つまり、外交的な措置や安全保障上の措置ではなく、バイデン氏個人の「親中イメージ」を今のスタートの段階で変えることで、強い大統領というイメージをつくり上げるための発言だったという見解です。
バイデン氏は、政権移行に向けて様々な政策やイメージづくりを加速させていますが、その中において私が一番注目しているのは、“いつ、中国との関係修復を行うのか”ということであります。
あらゆる手法で、“中国に対して弱腰ではない”というイメージをつくり上げようとするでしょうが、バイデン政権は確実に日本や韓国以上に中国との関係を修復させることに大きなエネルギーを費やすことになると思います。
その認識を持って、バイデン政権と向き合うことが重要であり、オバマ政権のように太平洋を越えて米国と中国が親密になり、日本が取り残されるようなことにならないよう、慎重な外交が求められます。
政治は、全ての過去を乗り越えて「今の政治を変えよう」と決断すれば、必ず行動が生まれ、「新しい政治」「国民のための政治」が出来上がります。
過去にこだわり「プラスの政治=融和」ではなく、「マイナスの政治=対立」を選択すれば、新しい政策をつくる政治エネルギーが失われてしまうことを、私たちは心に刻んで行動しなければならないのです。