(2020年10月30日にメールマガジンにて配信された内容を転載しています)
第203回国会(臨時会)が10月26日に始まり、菅義偉総理大臣が就任後初めての「所信表明 演説」を行い、「各党の代表質問」で本格的な国会論戦の火ぶたが切られました。
菅総理が「どんな国家観を描いているのか」「国民のために、どの政策を最優先に考え、結果を出そうとしているのか」はっきりする事でしょう。
私は、「政治家が政策を進める時、国家観と生活観のベストミックスでなければならない」と言い続けてきました。
そして、政策がどちらかに偏るようなことになれば、国民が政治に不満を感じる事になるとも考えております。
その意味においても、菅総理の今国会における一つひとつの政策提案・発言が注目されます。
平成8年に初当選して以来、私は12人の総理大臣の所信表明演説を議席で聞いてまいりましたが、そのうち11人が総理就任後初でありました。
その11人の新しい総理大臣の所信表明演説中で、“最も高揚し”“最も興奮し”“最も議場が沸いた”のが小泉総理大臣でありました。
その次が、政権を奪還した直後の安倍総理大臣。
そしてその真逆の“最も高揚せず”“最も興奮せず”“最も淡々として”“最も実務的”だったのが、今回の菅総理大臣でした。
ゴーストライターを使わず、各省庁からの原稿を積み上げた昔ながらの演説は、安倍総理とは全く違ったものとなり、派手さは全くないが“菅流”と呼ばれる、一歩一歩確実に結果を出していく「菅政治」の始まりを国民は実感したと思います。
平成8年の衆議院初当選同期の中で「政策・政治決断を、一度決めたら絶対に変えない」のが菅義偉でありました。
自分が決めた政策・政治決断が表に出たら、「誰が賛成し」「誰が反対し」「この政策のどの部分を追及・指摘されるのか」という事を十分精査し、戦略をつくったうえで発表するという慎重さを持っている政治家でもあります。
「政策・政治決断を、一度決めたら絶対に変えない」ことが、政治家・菅義偉の特長でもあり、良い個性でありました。
ただそれはナンバー2の官房長官だった時代までで、今は一国の総理大臣となり国の最終決断をする立場となり、この個性をこれからも進めていくのか、総理大臣に変わったことで幅の広い政治手法を取り入れていくのかが注目されます。
「長期政権を考えるならば、幅広い政治を取り入れるべきだ」「長期政権を考えるならば、今までの“菅流”がいい」という 2つの考え方が、菅総理大臣の周辺で必ずぶつかり合うことになるでしょう。
立憲民主党・枝野代表の代表質問、日本学術会議会員候補の任命拒否問題についての菅総理大臣の答弁を聞くと、「“菅流”を貫く」と決断したのだなと感じたのは私だけではないと思います。
「携帯電話料金の4割値下げ」「地銀の再編」「デジタル庁創設」「不妊治療の拡充」「行政改革」この大きな5つの課題と同時に、「新型コロナウイルス対策」「日本経済の回復」を同時に解決しなければならない事は、これまでなかった状況です。
ある意味、これまでの歴代総理が経験したことのない政治課題の大きな壁を、菅総理大臣は乗り越えていかなければならないのです。
それは、今までの「考え方」や「事例を踏襲」していては、乗り越えることはできません。
大きな壁を乗り越える事に「集中」する事が大事で、小さな壁は「避けて行く」政治判断をし、「政治の戦線を拡大しない」事も大事な戦略であります。
秋田県から集団就職で上京した日本の総理大臣に、世界中が注目していることは間違いありません。
新しい日本の総理大臣が、これまでの日本とは違う何かを世界に発信するのではないかという期待があるのです。
その多くの期待に結果を示すであろう菅総理大臣に期待いたします。